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公開日:2020/10/09
最終更新日:2020/10/12

オンラインゲーム依存が私たちに与える影響

Wi-Fi環境が普及、モバイル端末も多様化した現代社会において、私たちはインター ネットなしで快適な生活が送れなくなっています。インターネットに依存し、心身を病んでしまった人の話も聞きますね。

そこで今回は、龍谷大学の野村竜也先生に「オンラインゲーム依存」について伺いました。どういった状態がオンラインゲーム依存なのか、依存に陥るとどうなるのか、一緒に考えていきましょう。

野村 竜也(のむら・たつや)
野村先生の画像

滋賀県大津市出身。龍谷大学 先端理工学部 情報メディア学科 教授。工学博士(京 都大学)。
理学修士(大阪大学)。研究テーマは「人工知能と心理・社会」。心理学を応用し、人工知能やロボットが 人間に与える心理的影響を検証している。

オンラインゲーム依存はプロセス依存の一種

—先生がオンラインゲーム依存に着目されたきっかけを教えてください

私はこれまで、人が技術や機器、あるいはインターネットに抱く「不安」について研究してきました。主にネガティブな感情についての研究です。

そんな折に出版された、芦崎治氏の著書『ネトゲ廃人』に触れ、オンラインゲーム 依存の実態を知りたいと思うようになりました。このことをゼミ生に話したところ、一人が興味を持って調査を引き受けてくれ、卒業研究として一緒に進めることになったのがきっかけです。

その後は、私の方で調査を引き継ぎました。

—オンラインゲーム依存の存在を知った時は、どのような印象を持たれましたか?

オンラインゲームはプロセス依存の一種だと思いました。

依存症にはいくつか種類があって、アルコールやニコチンは物質への依存です。パチンコなどのギャンブル依存、あるいは買い物依存はプロセス依存にあたります。

オンラインゲームに依存している人は、仲間と一緒に苦労して珍しいアイテムを手に入れたり、仲間を助けて感謝されたりすることで快感を得ているのではないでしょうか。パチンコであれば、ずっと我慢して玉を打ち続け、ついに大当たりが出た瞬間の快感と似ています。

ただし、オンラインゲームはパチンコと異なり、画面の向こうにプレイヤーがいます。そういう意味では、同じゲームを楽しむ仲間に依存している状態とも言えますね。

SNSへの依存も同じプロセス依存ではないかなと思います。SNSもオンラインゲームと同じくオンライン上における人依存でしょう。

オンラインゲームに熱中するほど攻撃的な性格になる

—先生がオンラインゲーム依存の研究を始められた当初、世間ではその危険性がどれほど認知されていたのでしょうか

WHO(世界保健機関)はゲーム依存をそれほど危険視していませんでした。有名なアメリカ精神医学会が発行する『精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)』にも載っていなかったのを覚えています。

つまり、世界的にもそれほど注目されていなかったのです。DSMの第4版まではゲーム依存についての記載はありませんでした。第5版では「さらなる調査が必要な症状」として記載が追加されました。正式な病名としては認められていません。

注目度が高くなく、実態がよくわからないからこそ、オンラインゲーム依存について知りたくなったのですね。特に、個人の特性(生活や経験など)と依存の相関に興味がありました。

—オンラインゲーム依存の実態に関する先行研究が少ない中で、先生はどのように調査を進められたのでしょうか

予備調査で内容を精選した「オンラインゲーム依存尺度22項目」を使い、以下の皆さんに回答してもらいました。

  • 現在熱中利用者
  • 現在利用者
  • 熱中利用経験者
  • 利用経験者
  • 利用経験僅少者

22項目のうち7項目は、オンラインゲームによって生活がどれだけ乱れているか調査するために用意しました。例えば、「オンラインゲームに時間をかけすぎて、仕事や学校の成績・勉強に悪影響が出ている」や「食事よりもオンラインゲームを優先したことがある」に当てはまれば、オンラインゲームが生活に相当浸食していることがわかります。

オンラインゲームにどれほど“感情的に”依存しているかについても調べました。「オンラインゲームをしているときにだれかに話しかけられると、きげんが悪くなったり、いらいらしたりする」人、「オンラインゲーム上で珍しいアイテムがあると、それを手に入れるまではモヤモヤすることがある」人は、心がオンラインゲームに支配されている状態だと考えられます。

他にも、自尊感情が弱まっているか、自分は社会の中で役に立っている自信感があるかについても調査しました。

—オンラインゲームに依存している人は、どういった心理状態になっているのですか?

私たちは調査で、得られたデータと被調査者の様々な心理状態とを結び付け考察します。その結果、オンラインゲーム熱中者独自の特徴を見出すことができました。

その特徴というのが、オンラインゲーム依存と攻撃性の相関です。

オンラインゲームに熱中している人ほど、攻撃性が増していることがわかりました。オンラインゲームの依存度が高いほど、実生活でも敵意が強かったり、短気であったりしたのです。

さらに、オンラインゲームの熱中者の心理状態には、奇妙な現象が起こっていました。自尊感情が低下しているのと同時に、「自分は社会で役に立っている」自信も持ち合わせていたのです。

不特定多数の相手とパーティを組んで冒険を進めるオンラインゲームがありますね。熱中者はそのゲームの中で、自分は仲間の役に立っていると思っているわけです。

しかし、現実の世界に戻って来ると、ゲームで時間を浪費してしまった自分がいます。「自分は何をやってるんだろう…」と自信を失ってしまうのですね。

オンラインゲーム依存者は、アンビバレント(相反する感情や考え方を同時に抱いている)な状態に陥っていたのです。彼らは常に不安定な心理状態にあると言えます。

ーオンラインゲームに依存している人は自覚があるのでしょうか?

一人、たいへん興味深い被調査者がいました。

その人は「自分はオンラインゲームをやっているけれど熱中はしていない」と回答したのですが、1日でオンラインゲームに費やす時間は20時間だというのです。外から見れば明らかに熱中状態であっても、本人はそれを否定していました。

依存症について書かれた本によると、「自分は依存症ではない」と否定する症状は、すべての依存症で見られるそうです。つまり、私が出会った被調査者の回答は依存の症状を表していたのですね。

モバイルユーザーはパーティ型のオンラインゲームに依存

ーオンラインゲーム依存の調査は何年に実施されたのでしょうか

2011年2月の後は、2015年11月にも調査を実施しました。2回目の調査は20代と30代の若い層に絞って行っています。

2015年は使用機器についても調査対象に含めました。ゲームをモバイル端末でプレイしているか、据置機でプレイしているかで、依存度に違いが出るのではないかと考えたためです。

結果、モバイル端末と据置機では、依存に陥っているゲームの種類が違うことがわかりました。具体的には、一人で楽しむ人は据置機、仲間とつながってプレイする人はモバイル端末を使用するという傾向になっています。

モバイル端末であれば、どこにでも持ち運べて、いつでもゲームができますよね。仲間とパーティを組んで冒険するタイプのゲームは、オンライン上にいつでも集合できるかどうかも大事なので、そういう意味ではモバイル端末が好まれているのかもしれません。

依存は、ゲームの特性や使用機器、熱中者の性格や経験など様々な要因があって起 こります。モバイル端末でゲームに熱中している層にも、一定の傾向があるはずです。

—2011年と2015年の調査結果で変わった点はありますか?

オンラインゲーム依存者の傾向は特に変わらなかったです。

ただ、新しいゲームは次々と登場しますし、ゲーム機も進化しますね。最近では光回線も整備されてきているので、Wi-Fi通信環境もずいぶん快適になりました。

オンラインゲーム依存者を取り巻く環境は常に変わっています。日本はこれから、今でいうと韓国のオンライン状況に近づいていくと思います。

韓国では、すでに各家庭に光ファイバーが導入されています。契約をしなくても、新築には当然のように光回線が引かれている状況です。

また、韓国では国民全員に固有番号(住民登録番号)が付与されていて、それがインターネットのIDにもなっています。日本以上のネット社会なので、オンラインゲーム依存者も大勢いるでしょう。

実際、韓国ではオンラインゲーム依存が深刻化し、かなり問題になっています。

物事を多面的にとらえることは依存の回避にもつながる

—先生の研究対象は人工知能(AI)やロボットがメインですよね

最初に「不安」について研究していると述べた通り、対人不安とロボットの関係にも着目しています。

例えば、対人不安が強い、ロボットと話している方が楽だという人のケースを考えてみましょう。そういう人は、AIやロボットとだけコミュニケーションを積極的に取ろうとしますね。

自身に心地の良い言葉だけ返してくれるAIやロボットは、対人不安をますます強くしてしまうでしょう。結果、AIやロボットへの依存度が増していきます。

逆に、引きこもりなどで長期間、誰とも接点がない人もいます。そういった場合、対人不安を解消する最初のきっかけとして、AIやロボットでコミュニケーション力を養っていくこともできるでしょう。

AIもロボットも、人間の用い方によって、良い方にも悪い方にも影響を及ぼします。結局は、私たち次第ということです。

—AIやロボットに対して不安を抱く人もいます

技術恐怖症という概念があります。例えば、コンピューターをうまく使えずに失敗することが怖い、コンピューターに世の中が支配されるのではないかと不安だといった感情のことです。

彼らはコンピューターに対して負の感情を抱いているので、接点を持とうとせず、いつまで経っても使いこなせません。そうなると仕事や学業にも影響しますよね。

私は「この技術恐怖症は、AIやロボットに対しても起こる」と考え、今の研究を始めました。AIやロボットが進歩するほど、否定的な感情を抱く人も一定数出てくるだろうと思ったのです。

そして、私が開発している、不安などの否定的な感情を測定する心理尺度を用いた研究で見えてきたことがあります。不安を軽減するには、経験を高めるのが一番だということです。

AIやロボットのことがよくわからないから不安なのです。実際に接してみて「大したことないじゃないか」と思えたなら、不安も解消していくでしょう。

ーAIやロボットに限らず、私たちが新しい物事に接する時、どういった点に気を付けたらいいでしょうか

物事には必ず良い面と悪い面があります。その両方に目を向けることが大事です。

例えば、新しいアプリがリリースされ、大変人気が出たとします。便利なアプリであっても、アプリで連携した相手に現在位置を把握されるなど、必ずデメリットも存在するはずです。

TikTokを使っているなら、今アメリカで起こっている買収問題に関心を向けてみるのはいかがでしょうか。国際問題を考える良いきっかけになるでしょう。

都合の良いところばかり見てしまうのは人間の性です。しかし、それは依存度を高めてしまう要因になるかもしれません。

何事も多面的にとらえ、しっかり考える必要があると私は考えます。

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